古希迎ふ北の都の花人に

名所図になきみちのくの花一樹

行く春や走り書きせる旅便り

水色に濡れし夕空水芭蕉

たましひは星よりもらひ草蛍

いつしかに古希となりしよ星の恋

退職の自祝の旅や夏帽子

線香を花の輪に吹く日の盛り

夏木立「左官寄進」の石の椅子

水打って僧が鴉(からす)の糞(まり)を消す

空蝉(うつせみ)の離れぬ枝に捨てみくじ

清め塩なき会葬の礼涼し

八月や火星近づく喪の帰り

敗戦忌日本列島梅雨明けず

図書館の本にまどろむ秋の蝉

雲割れて白露の天は星こぼす

秋海棠姉妹いつしか傘寿・古希

水引草(みずひき)や寺への径の杉木立