暑いさなかの7月に、イタリアの庭園を見るためフィレンツェとーマに行ってきた。日本も暑かったがイタリアの庭は、陽が肌を刺すような感じがした。庭のひとつヴィラ・アルト・ブランディーニがあるローマ郊外のフラスカティへは列車で出かけた。

最近きれいに改装されたテルミニ駅から、40分位のところ。フラスカティ行きの乗り場は表示板でわりに簡単に見つかった。しかしそのホームには端から端までずーっと列車が停まっていて、一体どれに乗れば良いのか解らない。

ホームを歩いて行くと、途中に若者が二人いて「もっと前、もっと前…」と言っている。彼らは親切な旅好きの人だったのか国鉄のアルバイトの若者なのか、ジーンズ姿で制服などは着ていなかった。彼らの指示通りに乗った車輌は、途中で二手に分かれたが、私達は正しい方に乗っていたらしい。もし後ろの車輌に乗っていたらどうなったかと、その幸運を喜んだ。

出発時刻の2・3分前に列車は静かに動き出した。5分位前に出発することもあると聞いてびっくりした。車内のアナウンスなどもなく、次の駅に着き、停まる。車輌が大きいので、駅もこれまた大きく長く、日本の10倍位はあるかと思える白い長い看板にブルーの字で駅名が書いてある。ふたたび動き出し、次の駅に着いて、停まる。その駅名を読んで「まだ!違うわ」。

なにしろ前後の駅名はどこにも書いてなく、車掌さんは来ないし、不安な思いで次々と停まる駅名を確認するのみ…。一行四人とも緊張して「駅名に気を付けていようね」と注意しあった。やっとフラスカティに着いて、電車を降りて驚いた。電車の前にはもう線路がなく、文字通り終点。疲れたねと大笑い。

ローマへの帰路はもちろん一同眠り込んでしまった。終点のテルミニ駅は、線路の前が大きな駅のコンコースで、それ以上進めないのが分かっていたので。