今年もあずみ野に行ってきた。ここ3年程は毎年である。今年は都合のよい事に車を持っている友人と行くことが出来て大変よかった。行く時期は決まっている。5月の上旬といってもゴールデンウイークの直後である。その頃は北アルプスの山々には残雪があり、白と青の姿。その手前には緑紫色をした山があり、民家が点々と並び、田にはといえばアルプスの雪どけの水が一面に張られ輝いている。その水に残雪の山が映り輝くのが、またいい。この澄んだ雰囲気を描こうとして出かけて行くのである。

あずみ野はどこでも絵になるとはいうものの、少しでもいい場所をと考えてしまう。友人の車のお陰で、あずみ野のあちこちを今年は見られて有難かった。スケッチブックを広げ、あれやこれやと構図を考え、描いてみる。それから何時ものことであるが、キャンバスに向かった時は思う。今日は果たして描けるだろうか、ものになるだろうかと。不安がつきまとう。それでも思い切って描き出すことである。迷っていては駄目である。相手をしてくれる自然が、教えてくれるものが大切である。見えたものよりも、感じたもの(感じさせてもらったものか)をキャンバスの上に出せればと思いつつ風景を描くにしても、日を改めて何回か行って仕上げるとか、或いはその時一回で描いてしまうことがある。

いずれも夫々の理があるのだが、描く現場の感動は、その日その日によって同じではない。別の日になっては、違った感動になってはいないだろうか、という考えもある。どちらがいいとは、一概には言えないだろう。進む道は一つではない。