ブータンに旅して 菊地豊|翠風講ニュースレター第20号

ブータンに旅して 菊地豊

2010年1月8日よりヒマラヤの小国ブータンに旅行する機会に恵まれました。
ブータンは中国とインドの間に位置しているため両大国からの小国に対する脅威を感じ、長年鎖国政策を取ってきました。1950年三代目の国王が近代化の概念を導入し、1971年に国連に加盟後世界に向けて開国したのです。又四代目の国王が制限付で外国人の旅行客を受け入れたので、一般の旅行者でも国王の招待客であれば入国できました。

2008年五代目の国王誕生と共に民主化政策を実現し旅行も自由化になり制限付きですが誰でもブータンに旅行できます。

1月9日タイのバンコックからブータン国営航空ドルク航空でパロに到着したときは長年の夢が実現してとても感動しました。空港ターミナルはブータンの建築をこらした素晴らしい建物で入国審査管も税関職員すべてが民族衣装(男性はゴ・女性はキラ)を着ています。ブータンの民族衣装は日本の着物に似ているので日本人には違和感がありません。あらかじめビザを取得していたので入国審査は五分程度で終わり簡単に入国できました。

ブータンに到着して驚かされたのは、ガイドもドライバーも心から歓迎してくれ昔からの友達に会ったような感じでした。日本人と顔つきが似ていますが精神的な豊かさに溢れています。
ブータンが目指している全国民の幸せ「Gross National Happiness」とは何かをさぐる旅でもあります。

国際空港があるパロの街は長野県の山岳地帯の小さな町の様で、水田と可愛らしい農家の家が点在し、なんとも郷愁を誘います。初日から天気に恵まれ気温も小春日和でしたので快適なブータン旅行が始まりました。

首都テンプーは大都会の賑わいで物資が溢れ想像以上に近代都市です。日本では最後の秘境と言われているブータンですが何を基準に秘境と呼んでいるのか分からなくなりました。

確かに想像以上に険しい自然のなかで生活していますが貧しくともこころ豊かに生活しています。この豊かさはどこから来ているのか探ってみたい気持ちになったのは事実です。われわれが目指しているお金を基準にした幸福感と彼らが目指している幸福感がかなりギャップがあるのは確かです。毎日生きていることが楽しい、来世も幸せに暮らせると口々にいうブータンの人たちはこの教えをどこから学んだのでしょうか。

多分ブッダの教えが国民の日常生活に生かされているからではないでしょうか。ブータンではゾンと呼ばれるお城の中に宗教をつかさどる場所と行政をつかさどる場所が同居しています。それが目に見えない幸福感を宗教庁が与え、目に見える豊かさを行政機関が与えているのかも知れません。その二つの機関が上手くバランスよく機能しているからではないかと思われました。どちらかが大きな権力をもってもバランスが崩れてしまい庶民の幸福感が変わってきてしまうような感じがします。
ブッダの教えの中に大きな力が潜んでいるような気がしました。

われわれが生まれてきて何をなすべきか、どう生きたらいいのかをブッタの教えから学び、それを実行して生活しているブータンの人たちは貧しくともとても幸せに生きているような気がしました。

しかし、最近のブータンは大都会が抱えるさまざまな問題が起きているようです。子供達の麻薬や生活の乱れが問題になっているようです。インターネットで世界の情報が簡単に入り外国人の旅行者と接触する機会が多くなるにつけさまざまな文明社会の問題が押し寄せていることは事実のようです。ブータンが目指している全国民の幸せとは何かを考える為にも、もう一度訪れて見たい国です。

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