ブータンから考える 幸せとは何だろうか? 菊地豊

ブータンの幸せを語る時避けて通れないのが国づくりの目標にしているGNH(国民総幸福)です。GNHはGross National Happinessの頭文字を取ったもので経済指標としてよく使われるGDP(国内総生産)をHappiness(幸福)に当てはめた言葉の頭文字です。ブータンの第四代国王が国民の幸せを念頭に置いた国づくりをすべきだと提案したのが始まりです。ブータンはGNH政策のもとに幸福度指数を五年毎に国政調査しています。2015年の調査では、幸福度数は0.756であり、2010年度の0.743から増加しました。 2015年の調査では、ブータン人の91.2%が「幸せ」と答えており2010年の89.6%と比べるとブータンの目指す「幸せな社会」へとちかづいているようです。

ブータンの人達はどのように幸せを感じているのでしょうか。ブータンは、ヒマラヤの小国で人々は非常に貧しく慎ましい生活をしています。ブータンの人達は物質的にめぐまれていなくても、心がとても豊かです。それは「足ることを知る」精神が根付いているからです。温かい家族に囲まれ、仏教の伝統に基づいた豊かな精神性があり、どこの村でも人々は幸せに暮らしています。ブータンの豊かさは決して金銭的・物質的な豊かさではないということです。

ブータンの人達が幸せを感じる時は、「どれくらい満足のいく時間を、家族や大切な人々と一緒に過ごしているか」だそうです。どれだけ出世したか、どれだけお金持ちになったとかを問題にしていません。ブータンの人達が大切にしていることは、人間関係で家族や共同体のレベルでひとりひとりが幸せで信頼に満ちた関係を作れるかということです。 例えば近所の人、友達、家族と幸せで信頼に満ちた関係を作れるかどうか、言い換えれば、家族、社会のなかで何かがあった時に人々を助けられる自信があるかどうかということです。

幸せというものは、個人だけで存在することはありえない。家族との関係、親戚との関係、友人との関係、近所や地域の人との関係、これらの関係性が豊かである時に、人は始めて幸福を感じるのです。大事なのは、「持っているもので幸せを感じる」こと。今の環境に満足するかどうかで、幸せが決まってきます。GNH(国民総幸福)王立ブータン研究所の言葉です。