寄稿文 ブータンの幸せを考える 菊地豊

ブータンのある高校の校長先生ツェリン・ドルジ氏の言葉で「幸せとは、自分の持っているものを喜ぶことです」とあります。ブータンの人たちは、日本みたいに物質的には恵まれていなくても、心がとても豊かです。それは「足ることを知る」精神が根付いているからではないでしょうか。「大家族だから幸せと思う人もいれば、大家族であってもそう思わない人もいます。また小家族で幸せを感じる人もいれば、そうでない人もいます。結局大事なのは「もっているもので幸せを感じる」ことが大切ではないでしょうか。

ブータンもグローバル化に伴い、お金を尊重する人が増えてきています。首都ティンプーなどでは、民族衣装を着用しない人が年々増えてきています。又観光ガイドにチップをあげないと嫌な顔をされます。大学を卒業しても仕事に就けない若者が多くアルコールやドラッグにはまる若者が年々増えてきているようです。あなたが幸せなら私も幸せだといっていたブータンはどこに行ってしまったのでしょうか。

数年前、中央ブータンのトンサでお祭り見学に旅行した時、ホテルにリュックサックを残して外出している間に、リュックサックから現金を抜き取られました。鍵をかけないでリュックサックに現金を入れて外出した私が悪かったのですが、ブータンでは盗難などありえないと思っていた自分が本当にショックでした。お金があれば何でも買えると思っている若者が窃盗などに走ってしまうのでしょうか。

ブータンでは、仕事が見つからないので外国に出稼ぎにでかける若者が年々増えています。日本にも出稼ぎにきているようですが、日本の環境に馴染めず帰国する人が増え、ブータン政府が調査に乗り出しています。日本に行けば沢山お金をもらえ幸せが得られると思っているようです。多額の借金をしないと出稼ぎに出かけられないブータンの若者達ですが、途中で帰国すると借金だけが残ってしまい、両親や兄弟の生活環境まで変えてしまいます。

以前ブータンの人に、あなたは幸せですかと尋ねるとほとんどの人が幸せですと答えると書きましたが、ブータンもグローバル化にともない核家族が進み、幸せの考え方が変わって来ているのは事実です。ブータン人の幸せは、家族一緒に食事が食べられること、家族が皆健康に過ごしていることなど、家族関係の良好さが「幸福度」を増す重要な要素であると考えられていました。しかし首都ティンプーでは、家族の良好な関係が崩れつつあります。

ブータン第四代国王が唱えたGNH(国民総幸福)について、優しさ、平等、思いやり、という基本的な価値観が経済的成長の追求の架け橋となると信じていると話しています。
ブータンのGNH(国民総幸福)を日本でも勉強する必要があると思います。