寄稿文 映画「デンデラ」を見て 関根章雄

六月二十七日、立川シネマで、「デンデラ」を見た。豪華な女優陣が老婆に化けた。七十歳になると山に捨てられるという姥捨て山伝説のその後を描いた「デンデラ」(浅岡ルリ子主演)という名の映画である。監督は天願大介。父の今村昌平監督は、姥捨て山伝説を題材にした「楢山節考」(深沢七郎著)でカンヌ国際映画祭の最高賞に輝いた。その後日談を老婆たちが生きていたら、という構想をもとに娯楽作品に仕立てたものである。

極楽浄土に行くことを願っていたカユ(浅岡ルリ子役)は、助けられ、老婆の集落「デンデラ」で暮らすうちに生きる力を取り戻していくという筋書きで、浅岡のほか、草笛光子、倍賞美津子、山本陽子ら五十人の女優が老婆になり、ぼろをまとった。老女が再生する物語と思いきや、集落が熊に襲われると、映画は熊との対決一色になり、名女優が熊と戦い「デンデラ、デンデラ」と叫びながら次々と倒れていく。カユも雪山を疾走し、熊に立ち向かう。ラストシーンは、手負いの熊と正面対決の睨み合いで終わってしまって何か物足りない感じがする。ここはあえて見る人の判断にまかせるという手法を監督はとったのであろう。

もし余語老師が存命で、この映画をご覧になっていたら、何とおっしゃったか想像してみたい。ともあれ、死後の世界を扱った作品としては異色で奇異な感じがした。