寄稿文 日々断片 小松勝治

『臘八摂心参禅記』

26年前の平成4年12月の原稿が出てきた。余語老師がお元気だった頃のことです。当時お山のしきたりも知らずお坊さんと従業員の人数を聴き、人数分の文明堂のナボナを担いで行った。今にして思えば役寮大衆添菜で済んだことです。早速本題にはいります。

「摂心開関」維那様の低音が坐禅堂に響きわたる。平成四年十二月八日未明、七日間の参禅で疲れた全身に満足感がゆきわたる。程なく打ち出された雲版と木版の音が山内に響きわたる。開関口宣前に山主様が述べられた通り目出度く臘八摂心は円成した。念願叶って、リフレッシュ休暇で、摂心に参加、山主様始め、皆々様の暖かい心に接し、心豊かな八日間であった。七日目夜入浴後更衣中単頭様に、大雄の原稿を依頼され,、了解する。

▼第一日目・横浜線長津田駅十時発に乗り新幹線・大雄山線・タクシーを乗り継ぎ十一時半上山総受付ご挨拶後山田様のご案内で典座様・単頭様にご挨拶し差定の説明を受ける。大方は新到さんと行動を共にすることにした。新到さんは20代が殆どで60代のT氏、11月下旬に上山した若い尼僧のYさん等計8人で、厳しい中にも穏やかな雰囲気がある。居室は乗の間に一人で有る。一息入れて午後一時止静より参禅開始、午後は提唱も入れ40分の坐禅が五回である。夜七時の提唱後侍局で山主様にご挨拶、今回参禅の旨をお伝えし親しく会話させて頂く。
八時止静・八時半・普勧坐禅儀読経・八時四十五分抽解・九時開枕。

▼第二日目四時起床気温十二度・晴、摂心如定、坐禅十回九時開枕・特別祈祷中は随坐。

▼第三日目四時起床気温十度・晴、摂心如定、翆風講顧問K氏上山同室となるK氏と少々話し込んで十時開枕

▼第四日目四時起床気温七度・晴、 摂心如定、九時半開枕。

▼第五日目4時20分起床気温五度・晴、摂心如定なるも薬石後御供式入る。
 信徒会館三階に部屋替えをする、十時開枕。

▼第六日目6時起床気温七度・晴、午前洗濯作務、下着十五枚中庭に干す。茶所のお嬢さんに「良くやるね」と言われこれが『運雲運柴』と独り言。K氏に勧められ、齋の別采を作る。卵・塩・コショウ・マーガリンで十六人前のオムレツを約一時間でつくる。朱塗りの皿にキャベツの緑オムレツの黄色と彩は良い。
全員に残さずに食べて頂きほっとした。十時開枕

▼第七日目四時二十分起床気温九度・雨、摂心如定、翆風講のH氏I氏行茶供養施主として上山、午後七時止静の提唱まで行動を共にする。九時四十五分小薬石・十一時止静で「摂心開関」に向けた差定に入る。二十五時半開枕

▼第八日目六時起床・大雨 成道会。前後K氏と、山主様を始めお世話になった方々へお礼のご挨拶を済ませ、昼前下山。無事参禅出来たこと・休暇にご協力頂いた会社の上司同僚・平成六年に米寿と傘寿を迎える両親及び摂心参加に協力して呉れた女房に感謝しつつ。平成4年(1992)12月

▼『緩和ケア病棟の記』
昨年末ある病院に入院中の八十歳の兄を見舞った私はなにも知らずに入院二日目に見舞った。そこは十三階の病室で、何となく穏やかな空気が流れていた。ベットの兄はしきりに飲み物を進めて呉れた、あとで気がついたのだが昼食はアイスクリームと紙パックのジュースでしたがほとんど飲むことは出来なかった。飲むためのゼリー状の液体と混ぜるのだがそれでも飲めない。十五分程て帰ろうしたら、兄はもう帰るのかという、何故と聴いたら『寂しいじゃない』と言う普通はそんなことを言う兄ではない。言う通りにして会話するわけでもなく、暫くそばにいた。痛みを押さえる薬を注入するためのプラスチック製の針をお腹に刺して固定し管の端には痛み止の液体が入っているようだ、一連の処置が目の前で淡々と進められてゆく。
見舞いながら延命処置をしないと言うのはこういうことかと改めて認識する。

▼翆風だよりの何号かに金成さんが、元気なうちに文書化して延命治療をしないという文書に署名捺印をしておく必要がある、との投稿をされていたがいざ身内のこととなると、難しいことである。私の記憶ちがいでなければ、余語老師も一時ホスピスに入院されたとか。

▼はなしを戻して。結果として兄は身を以て生を明らめ死を明らかにしたことになります。そして入院19日目の午前、今年(2018)一月八日家族全員に見守られながら旅立ちました。その後一連の法事、通夜。告別。納骨。新盆。十二月九日の一周忌、兄入院からあっと言うまの一年であった。毎年年末にくる喪中はがきを見ながらそれぞれの人生の別れの物語が有るのだなとしみじみ感じる師走です。 
(2018年師走27日)                                                  

▼『翆風講ニュースレター縮刷版の記』

『翆風講ニュースレター』の再読したいところがすぐ出てこないことがあります。出かける時にかばんに忍ばせて、いつでもどこでも余語老師や歴代講元や講員の文章を拝読したいと感じることがあります。現講元がホームページで管理して呉れていることも、永遠ではありません。前講元の『翆風講ニュースレター』は平成十二年九月創刊、今号で三十八号です。散逸しつつあります。例えば朝日新聞の天声人語は月のまとめが発行されて、数年に一度数年分のまとめが発行されます。『翆風講ニュースレター縮刷版』をオリンピックの年の二〇二〇/一二/二一ころまでに自費出版したいと感じ始めました。百頁五十部で二十六万円程度とのこと。ご賛同の方がいらしたらご協力をお願いいたします。
(二〇一九年正月二十三日)