寄稿文 仏教と観光旅行 菊地豊

先日Buddhism tour と題するWeb セミナーに参加しました。オーストラリアの教授が主催したもので参加した国はインド、ミャンマー、インドネシア、香港、タイ、ブータン、等でした。日本から参加したのは私だけでちょっと残念でした。仏教遺跡を廻る旅行について各国の教授、僧侶、旅行会社などが講演しました。国によってさまざまな提案をしていましたが、結論的にはコロナ後の観光に仏跡巡りを取り入れたらどうかということでした。

私は何度かインドを旅行する機会があり、お釈迦様の足跡は三回訪ねています。お釈迦様が誕生したルンビニ(ネパール領)、ブッダガヤ(成道の地)、サルナート(初転法輪の地)、クシナガラ(入滅の地)、ラジギール(釈尊が弟子達生涯の大半を過ごした地)、等です。インドは国土が広く現在のように交通機関が発達していなかった時代に釈尊が徒歩で各地を回ったのは想像以上の苦労があったことをインドの地を訪れて感じました。

現在インドではBuddhism はすたれてしまったと言われていますが、釈尊ゆかりの地を訪れると国内外から沢山遺跡を訪れていることに驚きを感じます。釈尊のゆかりの地をおとずれてどのように感じているかはわかりませんが、ゆかりの地を訪れることに意義があると思います。インドネシアのボロブドール遺跡、カンボジアのアンコールワットミャンマーの仏教遺跡は訪れたことはありませんが、これらの遺跡を訪れて仏教の歴史を感じてみたいものです。

ブータン政府観光局の局長は,ブータンの仏教遺跡を観光の目玉にしていると話していました。ブータンで観光客が訪れる仏教遺跡は西ブータンのタクツァン僧院キチュ・ラカンチャンガンガ・ラカンドウンツェ・ラカン中央ブータンのジャンベ・ラカンクジェ・ラカン等です。また各地のゾンには必ず寺院があり特にパロゾン(パロ)タシチョ・ゾン(首都ティンプー)プナカ・ゾン(プナカ)シムトカ・ゾン(シムトカ)などが有名です。

ブータン各地のゾンで行われる仏教のお祭り・チェチュは、仏教の教えをビジュアル化したもので、国民に親しまれています。日本からの観光客がブータンのお寺を訪れ驚かれるのは、日本のお寺とブータンのお寺では大きな違いがあることです。それは二つの国の仏教の間に大きな違いがあると指摘しています。つまり仏教がアジア各地に伝搬する過程において、その地域・民族性に適応しつつ大きく変容していった歴史・地理的変遷の結果だと指摘しています。つまりそれぞれの国が仏教を日本化し、ブータン化したということです。私のつたない英語力では個々の教授が話した内容はあまり分かりませんが、コロナ禍後の海外旅行に仏跡巡りを取り入れたらどうかという提案に同感です。

仏教遺跡を訪れ仏教に関して知識を深めようとする提案です。ある教授は、コロナ禍で現地を訪れることができないので、バーチャルな旅行を考えたらどうかと提案がありました。つまりインターネットでガイドが現地を旅行しているかのようにリアルタイムで紹介することです。日本でも一部の旅行会社がヨーロッパや東南アジアですでに始めています。

日本の仏跡ツアーをZen tourism として海外に紹介したらどうかと思います。リアルタイムでガイドがお寺を案内したり、坐禅を紹介したり、宿坊での宿泊などを紹介するバーチャル旅行、コロナ禍での観光の一つかもしれませんね。でも日本に来ていただいて体験してもらうのが私は一番いいと思います。