大拙居士の墓 古川和子

六月の末、北鎌倉で吟行会がありましてその折、明月院の見事な紫陽花に出会いました。話には聞いておりましたが、それはそれは見事な紫陽花寺でした。門を入りまして谷戸の斜面に開かれた庭園は紫陽花の青磁色に埋め尽くされ、卍の形のような径に迷ったほどでした。 さて次に訪れたのが、明月院の近くのお寺、昔、縁切り寺で有名な東慶寺です。 そこで、鈴木大拙居士のお墓に出逢いました。大層広大は寺領で探すのに時間がかかりました。和辻哲郎、小林秀雄などその他、有名人のお墓が多くあるようです。

初蝉や耳を遠くへ瞑りて

中空に雲遊びをり昼寝覚め
青葉邃き古き寺領に寝釈迦石

紫陽花の卍の径に迷ひけり

老木の洞の天抜け夏の雲

木下闇人の象に木が枯れて  (象 (かたち))

夏菊のさらりと大拙居士の墓

藤の花ことし晩夏の狂ひ咲き

百日紅定めに生きて日をゆかす

発心の暑に耐へて句に仕へけり

南天の花の零るる裏鬼門

点眼の一滴涼し夜の雨

平成二十二年八月