マジック三昧の日々 石井 重夫

「オモ~イッ、オモ~イッ!ミンナ!テツダッテェ~!」この私の「悲鳴」に、ママのひざから離れずに座っていた「三歳児」が一斉に重そうに持つ「長~く伸び出た棒」を支えに助けにドタドタと集まって来てくれるのです。その数、十名を超します。小さな筒から伸び出た棒(長さ二メートル五十センチになる)を天井をつついて重そうに傾けた「マジックの演技」中のひとこま。

「私のマジック」を不思議な現象として素直に受け入れてくれる三歳児とのふれ合いに、私の喜びは最高調に達します。ホントにかわいいものです。

マジックを始めて十年。レパートリーも増え、このところ、毎年五十回前後の「出演(ボランティア)」にめぐまれ、準備や練習を含めますと、『マジック三昧』の日々を送っている感じです。

小学生との交流になりますと、反応が三歳児とは様子がまったく変わります。「ひねた」見方をする子が増えてきます。マジックの「しかけ」はわからなくても、常識とは違う結果を予想し先回りして、私を困らせようとする子が現れてきます。例えば、「バナナ」と「リンゴ」のカードを左右の手に持ち、裏にして。何のテクニックも使わずにただ重ねて離します。そして「どちらがリンゴですか?」聞きますと、カードは「最初のまま」なのに左手に持つバナナのカードの方を リンゴと答える「ひねた小学生」が大多数です。こんなとき、私はものすごく嬉しくなってしまいます。なぜって、子供たちが私を「マジシャン」として認めてくれたこととともに「裏の裏」をかいた演技が大成功したからです。子供たちの「ひねた」常識を崩せたからです。でも、小学生はだまされても「しかけ」がわからなくても「私のマジック」を「ウッソー!」と言ったりしながらも楽しんでくれます。それが私の何よりの喜びです。

お年寄りの方々ですと、またまた違ってきます。人生経験が豊富なことから「年寄りで、素人」の私や仲間を「理解し思いやる」気持ちが自然と態度に表れてきます。「しかけ」はわからなくても「演技」がうまくいっても、しくじっても拍手をしてくれます。お年寄りの理解と思いやりのこもった「あたたかさ」が伝わってくるのをいつも 感じます。『嬉しい限り』です!元気な老人会の方々、車いすの方も加わるデイサービス・入院病棟、介護老人保険施設、グループホーム、老人ホームの方々…。その時々のお年寄りの様子に合わせて、出来るだけ「笑い」や「なごやかな雰囲気」をもたらすような パフォーマンスを心がけています。時には、あいだに「非日常性」を強~く感じる演目も加えます。

最近の例では、シューベルトの「アベマリア」の歌曲をボリュウムを大きくして流し「非日常性」を強調します。私は、テンガロンハットをかぶり胸に☆をつけた黒装束の西部の保安官。そして、銀色に輝くボールをスカーフに隠したり、出したり、宙に浮かせたり、曲にあわせて踊るがごとくボールと一体となった演技をします。それまでのにこやかな様子が一変! シーンとなって、五分あまりのひととき、「♪ア~ベ~♪ マリ~ ア~♪……」の大きな歌声にのって銀色のボールを追い続けます。このときも私は「マジシャン冥利」に酔いしれるのです。お年寄りが子供のように「素直に」見入ってくれるからです。そして「拍手」。嬉しいですね。

幼児・小学生・お年寄りとのこんな「マジック交流」。これからも 声がかかり、身心の力が続く限り、続けたいと願っています。

二〇一〇年八月二十三日